ショート動画を自動で作る仕組みを組んでいて、キャラクターの頭の上に怒りマークや汗のマークを出したくなりました。最初はMacに入っている絵文字をそのまま画面に描いていたのですが、配信する動画に焼き込んでよいのかが気になったのです。調べてみると、判断の材料はライセンスの本文ではなく、フォントが自分で持っている情報のほうに入っていました。
macOSの使用許諾は、可否の判断をフォント側に投げている
手元のMacと同じ版の使用許諾契約をAppleのサイトから取ってきて、フォントの項目を読みました。「2. Permitted License Uses and Restrictions」の E に、こう書いてあります。
E. Fonts. Subject to the terms and conditions of this License, you may use the fonts included with the Apple Software to display and print content while running the Apple Software; however, you may only embed fonts in content if that is permitted by the embedding restrictions accompanying the font in question.
(フォント。本ライセンスの条件に従い、Apple Softwareに含まれるフォントを、Apple Softwareの実行中に内容を表示・印刷する目的で使用できます。ただし、コンテンツへのフォントの埋め込みは、当該フォントに付随する埋め込み制限が許す場合に限られます)
ここには2つのことが書いてあります。1つは、使ってよいのが「Apple Softwareを動かしている間」の表示と印刷だということ。もう1つは、埋め込んでよいかどうかの判断を、フォント側に付いている制限へそのまま委ねていることです。
つまり、契約書を何度読み返しても「絵文字を動画に使ってよいか」の答えは出てきません。読む先が指定されているので、そちらへ移ります。
フォントは自分の埋め込み制限を、数値で持っている
フォントファイルの中にはfsTypeという項目があり、そのフォントを文書に埋め込んでよいかが数値で入っているのです。OpenTypeの仕様書では、値ごとの意味がこう決められています。
4: Preview & Print embedding: the font may be embedded, and may be temporarily loaded on other systems for purposes of viewing or printing the document. Documents containing Preview & Print fonts must be opened “read-only”; no edits may be applied to the document.
(4: 表示と印刷のための埋め込み。フォントを埋め込むことができ、その文書を閲覧または印刷する目的で他の環境へ一時的に読み込むことができる。このフォントを含む文書は読み取り専用で開かれなければならず、編集を加えることはできない)
Font Bookの「情報を見る」からも確認できますが、まとめて見るならコードのほうが速いです。fontToolsを入れて、フォントファイルを開くだけです。
from fontTools.ttLib import TTCollection
c = TTCollection("/System/Library/Fonts/Apple Color Emoji.ttc", lazy=True)
for f in c.fonts:
print(f["name"].getDebugName(4), hex(f["OS/2"].fsType))
# Apple Color Emoji 0x4
# .Apple Color Emoji UI 0x4
ついでに他のフォントも同じように読んで、並べてみます。
| フォント | fsType | 意味 |
|---|---|---|
| Helvetica | 0x0000 | 埋め込み自由 |
| Menlo | 0x0000 | 埋め込み自由 |
| Arial | 0x0008 | 編集可 |
| ヒラギノ角ゴシック W3 | 0x0008 | 編集可 |
| Apple Color Emoji | 0x0004 | 表示と印刷のみ |
同じ/System/Library/Fontsに入っていても、条件は1つずつ違います。私はここを見るまで「Macに最初から入っているものは、だいたい同じ扱いだろう」と思い込んでいました。これは外れです。絵文字だけが、5つの中でいちばん狭い条件になっていたのです。
「表示と印刷のみ」と、動画に焼き込むことの距離
仕様書が言う「表示と印刷のための埋め込み」は、文書にフォントを入れて渡し、相手がそれを読んだり刷ったりするために一時的に読み込む、という形を指しています。動画に焼き込む行為はこれとは形が違って、フォントを渡すのではなく、字の絵を画像に変えて配ることになります。
私は法律の専門家ではないので、これが違反にあたるかどうかまでは判定できません。ただ、判定できないという事実のほうが、判断の材料になりました。1日に何本も自動で出す仕組みなので、判断を保留したまま回し続けると、あとで止めることになったときの手戻りが本数ぶん増えていきます。
毎日自動で動くものに、白黒のついていない材料を1つでも残さないほうがいいと思っています。止まったときに困るのは自分ではなく、その時点までに出した本数のほうです。
漫符は自分で描くことにした
置き換え先として素材サイトも見ましたが、1動画あたりの点数制限や再配布の条件がまた別に付いてきます。同じ種類の確認をもう一度やり直すことになるので、Pillowの図形だけで描くことにしました。怒りマーク・びっくり・なみだ・きらきら・はてな・あせ・ハートの7種類です。
if kind == "怒りマーク":
# 4本の血管が十字に寄る、いわゆる「怒りマーク」
cx = cy = W // 2
t = 15 * S
for a in (0, 90, 180, 270):
r = math.radians(a)
for k in (0.42, 0.72):
L = W * 0.30 * k
... # 中心へ向かう2本の線を引く
4倍の大きさで描いてから縮めると、輪郭のギザギザが消えます。1度描いたらPNGにして残すので、2本目以降は描き直しません。2026年8月23日に置き換えて、いまも同じ絵が回っています。
権利の確認が要らない素材に変えると、確認の手間そのものが消えるのです。絵の出来は素材サイトのものに及びませんが、7種類なら図形で足りる程度の絵なので、そこは割り切っています。
同じ節のすぐ次に、もっと効く制限が書いてあった
フォントの項目のすぐ下、Fはシステム音声についての条項です。動画を作る人にはこちらのほうが重い内容です。
No other creation or use of the System Voices, Live Captions or Personal Voice is permitted by this License, including but not limited to the use, reproduction, display, performance, recording, publishing or redistribution of any of the System Voices, Live Captions or Personal Voice in a profit, non-profit, public sharing or commercial context.
(本ライセンスは、システム音声・ライブキャプション・パーソナルボイスについて、これ以外の作成や使用を認めません。営利・非営利・公開での共有・商用のいずれの文脈であっても、これらの使用・複製・表示・実演・録音・公開・再配布を含みます)
個人の非商用に限る、と本文に書かれたうえで、公開や再配布が名指しで外されています。Macのsayコマンドで読み上げた音を動画に入れて出す作りにしていたら、ここで止まっていたはずです。私が使っているのはVOICEVOXなので今回は関わりませんでしたが、読んでいなければ気づけませんでした。
フォントの条項を読みに行ったついでに、その前後も目で追ったのが効いたと思っています。契約書は必要な項目だけ拾うつもりで開きますが、隣に自分の作りへ直接刺さるものが並んでいることがあります。
いま作っている動画に入れている素材で、出どころの条件をまだ読んでいないものはいくつありますか。
あわせて読む
出典
- Apple Inc. Software License Agreement for macOS Tahoe 26 第2条 E(Fonts)・F(Voices; Live Captions)。2026-09-17に原文を取得して確認
- OpenType specification: OS/2 table(fsType)(2026-09-17取得)
- 表の
fsTypeは、手元のmacOSに入っている各フォントを fontTools で読んで確認した値


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